
「デリヘルって売春と違うの?」
意外と知らない人の風俗と売春の違いをご説明します。
売春の定義「売春防止法」
日本では江戸時代から公娼というものがありました。
公娼とは公(おおやけ)に営業を許可された娼婦のことです。
江戸の吉原、京の島原、大阪の新地には、公娼を集めて塀や堀などで囲った遊郭という区画が設けられました。 ※遊郭以外にも公娼が集まる場所はありました。
明治時代に入って公娼を廃止しようという動きもありましたが、公娼に頼って生活している人が多く、また無理に廃止に追い込んでも影に隠れて営業を続けていけば、取り締まる側としてはより大変になるだけです。
公娼の立場が少し優遇されるなどはありつつも、制度自体は廃止されるには至りませんでした。
時代は飛んで第二次大戦終了後。
GHQ(連合国の占領軍)司令官から公娼制度廃止を要求され、ようやく昭和22年(1947年)に名目的には廃止されます。
ところが、連合国軍兵士らによる一般女性への性犯罪の抑制などを目的に、実際には警察も公認で売春が行われ続けていた地域がありました。
赤線地帯と呼ばれるエリアです。警察の地図には、売春を目的とする特殊飲食店の集まっていた地域を赤い線で囲んでいたことからこう呼ばれたのだとか。
この赤線地帯を廃止するための法律が、「売春防止法」でした。
売春防止法では、『勧誘』、『周旋』、『場所の提供』など、売春者をサポートするような行為について罰則が設けられています。ですが、売春者に対して、売春行為そのものを取り締まる罰則は設けられていません。 (勧誘等)第五条 売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。一 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。引用元:売春防止法第5条(周旋等)第六条 売春の周旋をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。引用元:売春防止法第6条(場所の提供)第十一条 情を知つて、売春を行う場所を提供した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
引用元:売春防止法第11条
施行は昭和32年(1957年)4月1日に、1年間の猶予が与えられ、完全施行は昭和33年(1958年)4月1日からとなりました。
売春者に対する罰則が設けられていない理由
売春防止法は、あくまでも売春者は保護の対象という考えのもと存在する法律です。
そのため、売春者に対する罰則は設けられていません。
したがって、売春行為をしただけでは逮捕されたり、刑事裁判にかけられたりするということはありません。
風俗は売春行為?デリヘルと売春の境界線

ファッションヘルス(箱ヘル)・デリバリーヘルス・ソープランドなどの風俗については、グレーな立ち位置のもと営業している店もあるようです。
風俗では、従業員が客に対して性的なサービスを提供しているものの、店舗側は『違法行為にあたらない程度のサービスを提供している』というスタンスがとられているようです。
また、風俗の違法性については、『性交(挿入行為)があるかないか』という点が大きなポイントとなります。
ファッションヘルス(箱ヘル)
ファッションヘルスとは、店舗内で従業員が客に性的サービスを提供する風俗です。
サービス内容に性交(挿入行為)は含まれておらず、基本的に違法性はないものとされています。
デリバリーヘルス(デリヘル)
デリバリーヘルスも、ファッションヘルスと大筋のサービス内容は同じですが、場所が異なります。
ファッションヘルスが店舗内であるのに対し、デリバリーヘルスはホテルや客の自宅などで行われます。
ファッションヘルス同様、基本的に違法性はないものとされています。
ソープランド(ソープ)
ソープランドは、個室付き浴場で従業員が客の入浴を補助する風俗です。
店舗側は『客が入浴した』という事実については認識していますが、それ以外の行為については一切認識していない、というスタンスがとられています。
店舗が摘発された場合に客は逮捕される?
もし、ご自身が風俗を利用した際に店舗が摘発された場合は、参考人として調書を求められることが多いようです。
『従業員が未成年であると知りながら性交した』というケースであれば例外ですが、基本的に客側が逮捕されることはないようです。
『風俗は自由恋愛』に関する最高裁の意見
風俗で従業員と客が性交した場合、店舗側は「従業員と客が自由恋愛のすえ勝手に性交しただけで、こちら側は一切知らない」というスタンスがとられることが多いようですが、これについては過去、最高裁で否定されています。
宮崎県市内にて、被告人が売春を行う場所を用意・提供したとして逮捕された事件です。 被告人は建物内での売春行為について、店員と客との自由恋愛を理由に「性交の有無は認識していない」と発言しました。 裁判所は、「建物内で金銭と引き換えに性交が行われていたことは明らか。自由恋愛を理由に性交について認識していないという理由も無理がある」と判断しています。 参考元:昭和61年10月最高裁の判決|文献番号1986WLJPCA10011050 |
風営法とは

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(ふうぞくえいぎょうとうのきせいおよびぎょうむのてきせいかとうにかんするほうりつ)は、日本の法律。略称は風営法(ふうえいほう)、風適法(ふうてきほう)、風俗営業法(ふうぞくえいぎょうほう)など。
風営法(正式名称は:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)とは風俗店を適正に運営するための法律です!
風俗店を営業しようと思うと、所轄の警察署へ営業の届け出を出す必要があります。
その風営法の中でも売春行為は固く禁止されています。
売春防止法ができた後、その規制すべき対象として『管理売春』などを営んだものには厳しい罰が下るようになりました。
他に規制対象となるものは
- 売春行為への勧誘
- 売春の強要
- 売春のあっせん
- 売春宿の営業
- 売春場所の管理
となります。
「売春行為を助長する人たちを捕まえるのが、売春防止法」という背景から、管理売春としてよく摘発される、援デリなどお店として売春を営業していて一発アウトになるケースが出てきました。
あとは女性を風俗店に仲介(紹介)する「スカウトマン」の摘発も増えてきました。
売春防止法が施行されたおかげで、性産業は大きなダメージを被りました。
そこで新しく考えられたのが【挿入行為】の無い性的サービスのお店。
当時の売春防止法には、売春は禁止でしたが性行為に類似したサービスに対する取り締まりや罰則は無かったので、性的サービスを求める男性客に爆発的に人気が出ました。
それが今のヘルスサービスの原型とも言えそうです。
売春になるかならないか、その一番大きな分かれ道は【挿入したか】【本番行為があったか】で、売春行為とはいわゆる挿入行為を含めたセックスをしたかどうかがキーポイントです。
ですのでその隙間、グレーの部分をうまく見つけて、性産業は大成功していったと言われています。
現在の風俗店では、挿入行為・本番行為は一切禁止されています。発覚され次第、警察のガサ入れにより従業員は逮捕され、営業停止になってしまいます。
しかし原則では現行犯(実際に挿入行為をしている現場を確かめる)ことが必要ですので、すぐにその場で逮捕、のようなことは難しいと言われています。
ソープに関しては、実際のところ自由恋愛だと言い張っても挿入行為自体は許されるものでは無いので、難しいとのことです。
しかし先にも述べた通り現行犯で無いと売春での即逮捕はありえないので、グレーゾーンが横行している、とも言えそうです。
風営法という法に沿って、届け出を出して営業しているお店であれば、風俗で働いていても売春してしまう心配はありません。
風営法の届け出とは、「国の法律にしたがい、風俗営業をします」という申請を国に出すことを言います。
その際に届出書を受け取りお店に掲示しておかなければいけません。
最近は風俗の求人サイトでも、届け出番号と写真の提出が無いと情報を載せられないサイトが多いので、風俗情報サイトに載っている風俗店は「ちゃんと届出を出している店」ということになります。
世界の売春事情|職業として成り立つ国もある
日本以外の国では、日本と同じく売春が禁止されている国や、職業の1つとして売春が認められている国もあります。
中国:違法
中国では、結婚前の性交はタブーと考えられており、売春に関する一切の行為は治安管理処罰法で禁止されています。もし違反した場合は次のような罰則が科せられます。
参考元:中国人女性の「貞操観念」リアル 性行為=結婚がまだまだ常識!?|マイナビニュース
第 66 条 売買春を行った場合、10 日以上 15 日以下の拘留に処し、5000 元以下の罰金を併科することができる。情状が比較的軽い場合、5 日以下の拘留または 500 元以下の罰金に処することができる。公共の場所で、売買春のための客引きを行った場合、5 日以下の拘留または 500 元以下の罰金に処する。引用元:中華人民共和国治安管理処罰法第66条
韓国:違法
韓国では、売春について風紀を乱し、人間の尊厳を損なう行為と考えられており、売春に関する一切の行為は性売買特別法で禁止されています。
もし違反した場合は、1年以下の懲役または300万ウォン(約33万円)以下の罰金が科せられます。
参考元:「売春を罰するな」韓国で売春処罰違憲論争 女性元警察署長も「限定的容認すべし」|産経ニュース
アメリカ:ネバダ州以外では違法
アメリカでは、生殖を伴わない性交は罪悪と考えられており、ネバダ州を除いて売春は禁止されています。
また、ネバダ州では、『売春を合法化することで性病や薬物問題などの未然防止につながる』として、ライセンス制度を設けた上で売春宿・売春婦が管理されています。
参考元:売春合法化のオランダやドイツでは売春婦に失業手当の支給も|マイナビニュース
オランダ:合法
オランダでは、売春婦も働く女性の1人という考えのもと、16歳以上の売春が合法化されています。
非合法組織からの社会的保護が大きな狙いとしてあり、年金・保険などの保障対象にもなっています。
参考元:オランダで「売春博物館」が設立された“理由”…売春合法化の国、「売春婦も働く女性の1人」|産経WEST
ドイツ:合法
ドイツでは、売春婦の社会的な保護を狙いとして、21歳以上の売春が合法化されています。
オランダ同様に、年金・保険などの保障対象となっており、職業の1つとして認められています。